その先に何があるのか

ふと,ある後輩の話していたことを思い出した。当時,僕が三回生で彼が二回生だったと思う。時期は忘れてしまったが,冬だったような気がする。違ったかもしれない。

彼が言うには,大学に入ってからずっと数学を勉強しているが,この先に何があるのかまったく見えてこない,のだそうだ。高校生のころは,大学に入ってもっと数学を勉強したら,視界がパーッと開けてくるのだと思っていた。しかし実際に大学に入ってからこれまで,数学を勉強しているけど,この先に何が見えてくるのかまったく分からないし,視野が開けた感じもしない。正確な言葉は覚えていないが,そんなことを言っていたような記憶がある。

その時,僕には彼の言うことがよくわからなかったし,何も言うべきことは浮かんでこなかった。*1

でも今ならその気持ちは何となくわかる気がするし,どうして自分が当時それをわからなかったのかもわかるような気がする。たぶん,僕は数学に接していても何かを見ようという意志を持ってはいなかった。でもその後輩は,何かを見ようとしていたんだと思う。だから先が見えてこないことに,満たされないような思いを抱いたんだと思う。

授業の時間になったら教室に行って,ぼんやりと話を聞きながら適当に黒板に書かれたことを書き写して,演習の時間に与えられた問題をひたすら解く。考えてみれば,僕がやっていたことはそれだけだった。たまに図書館などで教科書を手にとって眺めることはあったし,時には手に取った本を借りてきて読むこともあったけど,基本的にはカリキュラムにより与えられた以上のことはほとんどやっていなかった。だから,僕は自分から積極的に何かを見ようとはしていなかったのではないかと思う。まして,今やっていることの先に何があるか,なんてことはまったく気にしたことがなかったのだろう。

そういうのは,もったいなかったなあと思う今日このごろなのでした。

*1:その時,近くにもっと上の先輩もいたと思うけど,その先輩が何と言っていたか,残念なことにまったく覚えていない