Categorical characterization of MacNeille completion

標記のタイトルの論文を読んだので、内容まとめ。

この論文は、順序集合にまつわる諸々の概念の圏論的定式化を与えています。また、MacNeille completion の抽象的な定義と、その一意性の証明を与えており、この部分を理解することが今回の目標でした。

Section 2: Special Morphisms

  • 順序集合の圏の epimorphism/monomorphism は写像としての全射単射と一致
  • order embedding (order reflecting monomorphism) は strict monomorphism として特徴付けられる
    • f が order embedding とは  x \leq y \Longleftrightarrow f(x) \leq f(y) となること。要するに order reflecting (and preserving) な単射である。
    • f が strict monomorphism であるとは、 \forall u, v. (u \circ f = v \circ f \Longrightarrow u \circ g = v \circ g) であるような g が、適当な h によって  g = f \circ h と表せること。つまり f で equalize されるペアをすべて equalize するような g が必ず f を通じて分解されること。
  • 順序集合の extension が join and meet dense であることと essential であることは同値
    • embedding  P \rightarrow E があるとき E は P の extension であるという
    • extension  P \rightarrow E が join dense であるとは、どんな E の要素 x も P から来る x 以下の要素たちの上限として表されること。meet dense はその双対。
    • extension  P \rightarrow E が essential とは、順序を保つ写像  E \rightarrow E' であって  P \rightarrow E との合成が embedding になるものは、それ自身 embedding であるときにいう。

Section 3: Injectivity

順序集合 P が strictly injective であるとは、embedding  A \rightarrow B と A から P への射が与えられれば、その定義域を B に拡張することができること。つまり injective object の定義の monomorphism を embedding に置き換えた条件が成立すること。

次がこの節の主定理。というかこの節ほとんどこれだけ。

  1. 完備である
  2. strictly injective である
  3. どんな extension も retract をもつ
  4. proper essential extension をもたない

Seciton 4: MacNeille Completions

 P \rightarrow E について、次の条件は同値。

  1. MacNeille completion である
  2. essential extension かつ E が strict injective
  3. E が strict injective であるような最小の extension
  4. P の essential extension であるような最大の extension

ただし MacNeille completion の定義は meet and join dense で complete な extension のことであるという定義になっていました。したがって最初の二つの同値性は明らか。

残りの部分の証明の途中で MacNeille completion を作ったりしてるので、うまく構成すれば presentation がもう少し向上するのではないかと思いました。が、理解してしまった後ではわりとどうでもいいです。

あと、普通の具体的に構成する方のやり方で MacNeille completion を定義して、最初の条件を「MacNeille completion に同型である」としてもいいような気がしました。これもどうでもいいといえばどうでもいいですね。

rest of the paper

この後 Section 5 でブール代数の場合についての議論があり、最後にいくつかの concluding remarks が挙げられています。その中に、束の圏が非自明な injective をもたないことの証明が書いてありました。これ面白い。だから strictly injectives しか考えてなかったんですね。

実は Section 5 はほとんど読んでいないのですが、ここまでで既にこの論文を読む目的が果たせた気がするので、とりあえず残りは気が向いたら今度読むことにします。

感想

全体として、とりあえず定義と主張さえ読めればあとは八割方自力でなんとかなるという内容でした。*1

基本的に自力で証明を作れるので、書いてある証明を読む必要のあるところはあまり多くありません。むしろ、与えられた証明を読むだけで自分で埋める作業をしないでいると、感覚がつかめないままになってしまいます。この論文に限らず、数学をやるときは一般にいえることですが、可能であれば定理の証明は読まないで自力で補うべきですね。

ところどころ難しいところがあるようですが、適当に補ってやれば学部生の演習問題としてちょうどいいぐらいではないかと思います。

*1:Section 5 はどうなのか知りませんが