First-order Modal Logic, Section 3. First-order intensional logic
個体の解釈が可能世界ごとに違う意味論。
単に object の解釈を世界に依存するように変えるだけかと思ったら、そうではなくて object と intention の二種類の sort を用意してます。
syntax
intention variable (i, j, ...) が新たに term として加わります。関数記号は考えないようです。*1
論理式の構文には intention variable の quantification と predicate abstraction が追加されてます。predicate abstraction は、直感的には x を現在の世界で i が指すものに束縛して phi を評価するという意味。
semantics
object には domain の元を割り当て、intension には可能世界の集合から domain への関数を割り当てます。具体的には
- object の解釈先は空でない集合
- intention の解釈先は
論理式の解釈は素直に。
standard translation
three-sorted first-order logic への変換がありますよ、ということが書いてあります。sort は world, object, intention で三つ。
普通にやればできるのかと思ったら少し非自明なところがあって、変換先の論理 (three-sorted first-order logic) のモデルが必ずしも変換元 (first-order intentional logic) のモデルにはならないのです。
まず問題になるのが、「変換先では intention の解釈が関数とは限らない」ということです。これを解決するために、変換先には関数適用に対応する関数記号 を用意しておきます。
さらに、これだけだと異なる intention が同じ関数に対応することがあるので、外延性
を満たすモデルだけを考えることにするとようやく対応がとれる、と。
論理式の変換自体は普通にやればできるみたいです。細かい技術的なことはいくつかありますが省略。
意味づけとか
本文中では、わりと詳しく哲学的な意味づけを語ってます。
"The number of planets is necessarily greater than five." という例が出てきていて、これは
- i = the number of planets
- p(x) = x is greater than five
として □(λx.p(x))(i) という解釈と (λx.□p(x))(i) という解釈の二通りが考えられるとかいう話をしていたり。
ちなみに、最初からそう書いてくれればいいのに、始めの方には
- It is necessary that the number of planets is less than five.
- The number designated by "the number of planets" is necessarily less than five.
の違いだとか書いてあって、それだけだとどう違うのかわかりませんでした。でも論理式を見れば明らかで、一言で言えば "the number of planets" がそれぞれの可能世界において知られている個数と解釈されるのか、それとも今知られている個数と解釈されるのかの差だと。
その前に書いてあった "The president of the United States is a Republican." と "The president of the United States is an important concept in politics." での "the president of the United States" の解釈の違いの話はどうも釈然としない部分があったような記憶があるんですけど、今考えてみるに object を食う述語と intention を食う述語の例だったんだろうかと思います。後で読み返すか。
*1:intention の関数は入れたとするとどう解釈するのか少し気になるところですが