"Multi-valued Semantics: Why and How", Arnon Avron

論理の意味論を二値で与えると modularity *1があることが多い(らしい)が、一方で analycity *2は失われる。逆に multi-valued matrix を使うと analycity が保障しやすい。この論文は multi-valued non-deterministic matrix が modularity と analycity の両方をもつフレームワークを与えることを、ある種の paraconsistent logic を running example として使いながら実証している。

面白いと思ったのはそういう技術的な部分ではなくて、それに続く議論のところ。実は multi-valued semantics は Suszko reduction と呼ばれる変換によって二値の意味論に落とせることが知られている。真偽が二値で表せるというのなら、many truth-value は何を意味しているのかという疑問が出てくるわけだけど、これについて "information-value" という言葉を用いて一つの回答を与えている。

「論理の意味での "truth-value" が真と偽の二つしかないという Suszko's thesis の主張は正しそうに思える」「multi-valued semantics における "value" が表しているのは単なる真偽ではなく、真偽の決定に関わる諸々の情報だと考えるとよい」というのが著者の結論のようで、これは確かに「真でも偽でもない真理値」のようなものを考えるより適切な見方であるように思います。

*1:新しく公理を追加または削除したときに、意味論をどのように変更すればいいかが明確である、というような意味で modular という言葉を使っているらしい

*2:論理式の真偽値が、その subformula の真偽から決まるというような意味